AIに仕事を奪われる?変化する仕事と「人間力」を考える
本記事は筆者の考えを含むコラムです。調査・予測と意見を区別してお読みください。
「AIが進化したら、自分の仕事はなくなるのでは?」
最近、こんな不安の声をよく聞きます。この記事では、過去の研究と将来予測を区別して読みながら、私なりの考えをお伝えします。
データで見る「AIと仕事」の今
AIと雇用の話でよく引用されるのが、野村総合研究所がオックスフォード大学の研究者と行い、2015年12月に発表した共同研究です。国内601種類の職業を分析し、当時から10〜20年後に日本の労働人口の約49%が就く職業で、AIやロボット等による技術的な代替が可能と推計しました。これは実際に49%の人が失業するという予測ではありません。野村総合研究所の原資料で確認できます。
一方で、なくなる仕事と同時に新しい仕事も生まれています。世界経済フォーラムの「Future of Jobs Report 2025」は、2025〜2030年に世界で約9,200万の仕事が置き換わり、約1億7,000万の仕事が新たに生まれると予測しています。これは企業の見通しを世界の雇用に当てはめた推計で、AIだけではなく技術全般や人口・経済・環境の変化を含みます。日本国内で同じ人数の増減が起こるという意味でもありません。
働く人の受け止め方は分かれています。チェンジホールディングスなどが2026年7月に20〜59歳の会社員・役員1,104人を対象に行った意識調査では、AIに仕事を代替される懸念が「ある」人が43.6%、「ない」人が44.2%と、ほぼ半々でした。これは回答者の意識であり、仕事が失われる割合の予測ではありません。
仕事の内容が変わる可能性はありますが、個別企業の人員削減を一つの原因だけに結びつけることはできません。AIによる作業の変化と雇用の増減は分けて考えます。
パソコンで行う作業の一部は変わる
私は、パソコンを使う業務の一部はAIで代替・補助される可能性があると考えています。
資料作成、データ入力、請求書の処理、メールの下書き、プログラミング。こうした作業の下書きや情報整理にはAIを使える場面があります。ただし、請求書の金額や取引先への文面など、結果の正確さは人が確認する必要があります。
ただし、これは「仕事が全部なくなる」という意味ではありません。一部の作業をAIが担うようになれば、人間は「AIに何をさせるか決める」「結果を確認して責任を持つ」役割に移っていくと考えています。
芸術やホスピタリティに人が担う価値
一方で、芸術やホスピタリティ(おもてなし)には、人が担う価値があると考えています。職業全体が必ず残るという意味ではありません。
もちろん、AIも絵を描いたり音楽を作ったりできます。ロボットが料理を運ぶお店も増えました。それでも人は、「誰が作ったか」「誰がもてなしてくれたか」に価値を感じます。
好きな画家の作品だから欲しい。あの店員さんに会いたいから、またあのお店に行く。こうした「人とのつながり」から生まれる価値は、AIには代わりにくいものだと私は思います。ただし、これらの仕事にも自動化される作業はあります。
本当の課題は「何をしていいかわからない人」が増えること
私がむしろ心配しているのは、仕事がなくなることそのものより、AIができる作業が増えた結果、何をしていいかわからない人が増えることです。
これまでは「作業ができる」こと自体に価値がありました。しかし作業をAIに任せられるようになると、「では、あなたは何をしますか?」という問いが一人ひとりに突きつけられます。
これから大事になるのは「人間力」
そこで大事になるのが、人間的な魅力、つまり「人間力」だと考えています。
私が考える人間力とは、たとえば次のようなものです。
- 信頼される力:「この人に任せれば安心」と思ってもらえる
- 気づく力:相手が言葉にしていない困りごとに気づける
- 人をつなぐ力:場の空気をやわらげ、人と人の間に立てる
- 責任を持つ力:最後に判断し、結果を引き受けられる
「あなたにお願いしたい」と思われる理由を、自分の行動から育てていけると思います。
別の見方も知っておこう
もちろん、違う意見もあります。
- 芸術やホスピタリティでも、AIやロボットで効率化される部分は確実に増えていく
- パソコン業務でも、AIを使いこなす側に回れば、仕事はむしろ増えるという見方
- 体を使う現場仕事の方が、長く人間の仕事として残るという意見
未来のことは誰にも断言できません。だからこそ、特定の職種に頼るより、どんな仕事でも通用する力を育てておくことが大切だと思います。
まとめ
- パソコンで進める作業の一部は、AIによる補助や代替が進む可能性がある
- 芸術やホスピタリティでは、人とのつながりに価値を感じる場面がある
- AIを使える場面が増える時代だからこそ、「何をするか」を自分で決める力が問われる
- 私は、人の話を聞き、確かめ、判断を引き受ける力を大切にしたい
AIを怖がるより、うまく使って空いた時間で、人と向き合う力を磨いていく。それが、これからの時代を生きるいちばんの備えだと私は考えています。
あわせて読む
新しいAIの性能や料金の数字にも、条件を付けた読み方が必要です。Claude Opus 5.5の公式発表を読み解く記事も参考にしてください。
参考情報(2026年9月24日確認)
- 野村総合研究所「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」(2015年12月2日)
- 世界経済フォーラム「Future of Jobs Report 2025」要約(2025年1月7日)
- チェンジホールディングス「人とAIの『線引き』に関する意識調査」(2026年9月4日)
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。